弁論術から紐解くストーリーテリングの手法論

こんにちは、代表の杉山です。

先日は昨年PVを撮影した宮古島に社員全員で合宿に訪れました。

2年前に社員第一号の末浪と二人で宿泊したレンタルハウスに、今度は6名全員で戻ってくることができ、感慨深いものがありました。

また宮古島合宿の話は広報担当のコリスがブログで語ってくれることでしょう(笑)

さて、今回は前回(ストーリーマーケティングにおける6つの構成要素)で触れた「6.思考(弁論術)」の要素について取り上げてみたいと思います。

アリストテレスは「詩学」の中で、ストーリー創作における6つの構成要素として
以下の6つを挙げていますが、このうちの「思考」については自身の別著「弁論術」の中で取り上げると記されていました。

ーストーリーの構成要素ー

  1. 視覚効果(舞台装置)
  2. 性格(キャラクター)
  3. ストーリー(プロット)
  4. 語法(台詞)
  5. 歌曲(メロディー)
  6. 思考(弁論術)

アリストテレス 弁論術 (岩波文庫)

弁論術は古代ギリシャにおいて、議会や法廷など、公衆の前で聴衆を魅了し説得するための説得術を論じたアリストテレスの代表的な著書です。

いかに自身の主張を聴衆に伝えて納得してもらうかが説かれており、ストーリー構築やWebコンテンツの作り方だけでなく、日々のプレゼンテーションやセールスにも使える内容となっています。

では具体的に、どのような方法でより効果的に相手に主張を伝えるのが有効なのか、一緒に見ていきましょう。

よい説得とは?

相手に主張を理解してもらい、同意を取り付けることを説得といいますが、本当に相手が腑に落ちているかどうか、納得しているかどうかが一つのポイントです。

多くの場合、相手が自分と全く同じ知識を持っていることはありません。
特にWebサイトの様に、不特定多数の人に主張を伝えなければいけない場合、専門用語を詰め込んだような内容ではなかなか読んでもらえません。

アリストテレスは、相手に専門知識がなくても、一般常識だけで納得できる情報を積み重ねて説得するのが良い説得だと説いています。

説得手段はどんなところから得られるか?

それではどのようにすれば聞き手が納得するような伝え方ができるのでしょうか。
人を魅了するためには、以下の3つのポイントを押さえる必要があります。

  • 【感情】聞き手の感情を理解し引き出す
  • 【人柄】話し手の人柄を演出する
  • 【論理性】話す内容の説得力それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

■感情

弁論術の中では14種類の聞き手の感情について取り上げられています。

-14種類の聞き手の感情-
怒り、穏和、友愛、憎しみ、恐れ、大胆、恥、無恥、親切、不親切、憐れみ、義憤、妬み、闘争心

アリストテレスはそれぞれの感情について、どのような時に、どんな人に対して、どんな事でその感情が発生するかを分析します。
そして、その要素を揃えることで逆にその感情を引き出そうとするのです。

こう言うと少しブラックな手法に聞こえますが、感情は理屈ではないので論理的に根拠を出して説得しても効果がありません。
そのため聞き手の感情を想定し、それを意識的に扱うことでまず話を受け入れてもらう体制を整えることは非常に大きな効力を発揮します。

■人柄

2つ目のポイントとして「人柄」が上げられていますが、単純にまとめると、話し手が信頼できる人物かどうか、ということです。

では信頼に足る人物というのはどのような特徴を持っているのでしょうか。

それには
「思慮」「徳」「好意」
の3つが重要であるとアリストテレスは説きます。

・思慮

「聞き手の幸せを念頭に」、善悪の判断が適切にできること。つまり何を聞き手は求めているかを把握し、提示できる能力の事と言い換えても良いでしょう。
これは受け答えや話している内容から判断できます。

・徳

「人徳」と言われたりもしますが、具体的には「正義」、「勇気」、「気前の良さ」、「節制」、「度量の大きいこと」、「鷹揚(小さなことにこだわらない)」、「知性」などが徳のある人の特徴としてあげられています。
身近な人であればその人の普段の行動を見て感じることができますが、文面などでは自身の信念、美徳を繰り返し伝えたり、普段の性格を滲ませることで伝えることができるでしょう。

・好意

まず先に相手に対して好意を持っていることを伝えることです。
聞き手の人に対して、あなたのためにこの話をしたい、あなたと同じ価値観を持っていて共感している、という旨を伝えることにより「この人はこちらに好意を持っている、この人の意見は自分のためになるかもしれない」と思ってもらうことができます。

実はこの3つ、どれが欠けても信頼には至らないため、全てを兼ね備えておく必要があります。
聞き手への好意や徳のない人間は正しい意見を知っていても教えてくれないだろうし、思慮のない人間はそもそも正しいことを知らないだろう、という心理が働くためです。

コンテンツを作ったあと、この3点が欠けていないかどうか確認してみると良いでしょう。

■論理性

相手を論理的に説得するための手法として、説得推論と例証、という2つがあげられています。説得推論とはいわば演繹法、例証とは帰納法のようなものです。

説得推論とは、
「彼は優秀な人間だ。だから今度のプロジェクトもうまくやるだろう」といった「○○だから××だ」という形の構造をいます。
これは実は
「優秀な人間はプロジェクトをうまくやる」
「彼は優秀な人間だ」
「だから彼は今度のプロジェクトもうまくやるだろう」
という三段論法のうち、「優秀な人間はプロジェクトをうまくやる」という常識部分を省略した形になっています。

説得推論のポイントは、
・確認するまでもない当たり前の事は省き、聞き手が話の道筋を追いやすいよう、最短距離で行う。
・根拠はその問題特有のもので、より具体的なものを集めておく。
の二つです。

例証は、主張したい内容について、類似例をいくつもあげて主張の正しさを証明することですが、あくまでも例示のため説得力には欠けます。
そのため、例証は説得推論の補足として使い、説得推論が終わってからそれを裏付けるように例をあげていくのが効果的でしょう。


これまで、聞き手(読み手)に内容を理解し納得してもらうために、
感情、人柄、論理性の3つが重要であるとお話してきました。
アリストテレスの面白い所は、目の前の相手に理解してもらうためには「論理性」が一見重要に思われますが、それだけではなく、相手の感情や、どう見られるかといった客観性もあわせて考えなければいけない、といった視点を論理性と同列に取り上げた所にあります。

もともとの著書の弁論術はかなり難解な書き方になってしまっている部分も多くありますので、さらに詳しく知りたい、という方は


どんな人も思い通りに動かせる-アリストテレス-無敵の「弁論術」-高橋健太郎
のような要約本を読んでみられることをおすすめします。

ストーリーマーケティングも心理学も、この弁論術もそうですが、良くも悪くも人の感情や結論をコントロールしてしまう一面があるため、くれぐれも悪用されないよう、強い倫理観を持って活用されることを願います。

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